障碍のある方がグループホームに入居する理由の一つとして「家族との距離を測りたい」というものがある。
相談支援をしているととてもよくある理由だ。そしてほとんどうまく行かない、いわゆる困難ケースになりやすい。
今私がサービス管理責任者をやっているホームにもこの理由で入居している方がいる。自閉症の方だが、イライラすると大声を出して壁をたたき、足を踏み鳴らす。長いと1~2時間続き、周りの入居者が怖がって不穏になってしまう。通所先でも同じことが起こる。刺激を減らすために個室対応をしたり、好きなもので活動を組み立てたり、クールダウンの場所を設けたりいろいろと工夫をしてくれていたが、ヒートアップすると落ち着かず、やはり周りの方が巻き込まれてで不穏になるのでギブアップされてしまった。いろいろやってくださり感謝している。
という訳で今は通所先がなくなってしまったので、日中はご自宅で過ごしておられる。うちのホームは夜勤対応中心で日勤がいないからだ。こちらの立場としてはやれることが少なくてもどかしい。
”家では生活が難しい”、”ご本人が大声を出したり暴力をふるったりするので一緒にいると家族が疲弊してしまう” ”ご家族といるとご本人が暴れてしまう”という理由でホームに入居されたので、日中は家で過ごして夜だけホームに帰るという生活が良いとは決して思えないのだがなぜかこういうことになっている。
なぜか?
親御さんの責任感が強いから
自分の子供が周りに迷惑をかけていると知ったら何とかしなければならないと思うのは親の常だろう。
この気持ちはとても大切だし、支援者としてはありがたい気持ちではある。が、ここが障害支援の本当に難しい点なのだ。
悲しいかな誤学習という言葉がある。社会的には良くない行為が成功体験として認識されてしまうことだ。泣いて叫んだらほしいものを買ってもらえた。次回も泣いて騒ぐ。買ってもらう。周りの人は良くないこととわかっていても根負けして買ってしまう。本人は悪いことをしている認識なく、ほしいものが手に入り満足。という感じだ。そして毎回ほしいものがある時には泣いて騒ぐ。
この誤学習が家族生活を難しいものにしていることがとても多い。家族や周りの人が、本人が子どもの頃から良かれと思ってやってきたことが大人になってからの間違えた行動につながっている可能性がある。それを学びなおししないと同じことが繰り返される。そのためにはリセットが必要なのだ。
親御さんの責任感や何とかしたい気持ちはとてもよくわかる。が、リセットするためには完全に距離を置く必要がある場合がある。自閉症の方は場所や人で記憶が強く結びついているので、同じ場所で行動を上書きすることが難しい。だから入所施設やグループホームで環境を変えて再アセスメントをとり、適切な支援を組み立てなおす。それでもうまく行かないことは多々あるので、トライアンドエラーを繰り返し、ご本人が安定して生活できる場を探ってゆく。
ので、前述した今私が関わっている方は、家に帰る時間が増えることで不安定要素が増えると支援者は危惧している。そして、お母さんはホームでのやり方も家と合わせてほしいと要望するため、職員も疲弊してしまう。荒れているご本人支援に加えてお母さんからの要望にも応え、細かいことに気を遣う日々が続くからだ。
さて、どうするか
①ホームでの支援方針を立て、できることとできないことを明確化し、ご家族に説明をする ②通所先を早く探してもらう ③家から離れた日中支援型のホームを検討してもらう ④ご家族と離れた場面でアセスメントをとれる制度を活用し、支援方法を新たに構築する ⑤増薬でご本人の気持ちを抑える ⑥ヘルパーなどの利用を増やし、ご家族から支援者に支援をうつす
いずれにせよ、役所のCWや計画相談員などを巻き込んで支援全体の見直しを測らないとホームだけではどうしようもない。そして、ご家族の想いを受け止めながらも距離を離してゆかないと変化は起こらない。やはり大事なのは連携だ。
支援者が考える支援内容とご家族が考える支援内容が違う場合、ご本人の意思を尊重するために意思決定支援が叫ばれて久しいが、意思決定プロセスの構築ができる職員がいて、関係機関と連携できないといけない。
まずはホームの職員でアセスメントをしっかりとり、アセスメント+支援方針会議を実施、自治体や計画相談には家族へのアプローチを依頼、生活全般が見られるような支援体制を検討してもらうように働きかける。が、支援者の決定事項をご家族が拒否してしまう可能性は高い。これまでも数々の支援者がそれで関係を断っている。
本人は本来とてもおだやかでにこやかな人なので、安心して安定して生活できる場があれば本当に良いのにと思う。みんな思いは同じはずなのに、なぜかうまく行かない。家族対支援者となってしまう図式は往々にして起こるが、本人と家族の距離が近すぎて見えないことも多いからだと思う。支援者を親御さんが信頼できないのかもしれない。信頼してもらえるような関係づくり、支援内容が必要だ。
適切に手を離す親御さんもいらっしゃれば、ご本人のために自分が何とかしなければとおっしゃる親御さんもいらっしゃる。その中でご本人の生きやすさを探ってゆくのが支援者としての在り方だと信じて日々考えている。
日々の難しいケースに向き合う実務者が一人で抱え込まなくて済む場を作りたいと思っています。ご相談に乗ります。困難ケース整理セッション Zoomによる対面方式 1回60分 ①ケースの全体像整理 ②混乱の原因特定(1点)③まずとりかかる3アクション提示。(モニター5,000円/3名)守秘義務厳守。

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